「拡」
正字(旧字体)は「擴」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は廣(広)。 広(ひろい)は形容詞であるが、手(手へん)を加えて動詞とし、そのために音が少し変化したのであろう。広は広く大きな建物をいう。それで拡は、“広く大きくする、ひろめる”の意味の動詞として使う」

[考察]
字源の説明はほぼ妥当だが、広を「広く大きな建物」の意味とするのは変である。意味はただ「ひろい」である。白川漢字学説では形声の説明原理がなく、すべて会意的に説くのが特徴である。 だから広(広く大きな建物)+手→広く大きくすると解釈した。
形声の原理から字源を説くと次のようになる。廣は「四方に広がる」というコアイメージがある(530「広」を見よ)。したがって「廣(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせた「擴」は、枠を四方に張り広げる情況を暗示させる。この図形的意匠によって、「枠を広げる」の意味をもつ古典漢語k'uakの視覚記号とする。k'uakはkuang(広)から派生した言葉である。
『孟子』に「擴げて之を充たす」(枠を広げて、それを充実させる)という用例がある。拡充という熟語はここに由来する。