「格」

白川静『常用字解』
「形声。音符は各。各は神への祈りの文である祝詞を入れる器(ᄇ) を供えて祈り、神の降下を求めるのに応えて、神が天から降りて来る形で、“いたる”の意味がある。神が降りて来ることを来格という。神意によってことを“ただす”ので、戒めのことば、正しいことばを格言という。正しいことには抵抗が多く、言いがかりをつけてからまれることがあるので、木の枝などの“からむ” ことをいい、格闘のように用いる」

[考察]
各の解釈の疑問については176「各」の項で述べた。夂(足あと)と口(祝詞を入れる器)の組み合わせから、神が天から降りて来る→いたるという意味を読み取る。舌足らず(情報不足)な図形から情報夥多ともいえる解釈をして「いたる」の意味を導いたが、この「いたる」と木を合わせた格はいったいどんな意味なのかはっきりしないし、意味の展開もはっきりしない。
各は「神が降りて来る」の意味というが、なぜ格もその意味になるのか。またなぜ「神意によってことを正す」→戒めの(正しい)言葉の意味になるのか。また正しいことは言いがかりをつけてからまれるから、「からむ」の意味になるというのは理解に苦しむ。「木の枝がからむ」ことと格闘の関係も分からない。
字源だけでなく、意味の展開の説明も疑問だらけである。

白川漢字学説は字形から意味を求める方法であって、言葉という視点がないのが特徴である。しかし語の深層構造、すなわちコアイメージを捉えることこそ重要である。格のコアイメージは各という記号にある。各のコアイメージは「固いものにつかえて止まる」である(176「各」を見よ)。このコアイメージを図形に表現したのが各である。これを分析すると「夂(下向きの足)+口(石のような固いもの)」となる。足が→の方向に進んで来て、固いものにぶつかって、そこでストップする情景を設定している。図示すると→|の形のイメージである。Aが→の方へ進んできてBでつっかかって止まる、そんなイメージである。この図形的意匠によって、終点にいたることを表すのである。Bに視点を置くと、固いもの、つっかかるもの、押さえて止めるものというイメージが生まれる。このイメージの各に限定符号の木を添えると、動かないように固く押さえる道具の意味を作り出す。ここから、固く芯が通っているもの、こつんとつかえるもの、手応えのある芯という意味に展開する。骨格・品格の格はこれである。また、はみ出したりしないようにするために設けた基準や決まりという意味を派生する。格式・規格の格はこれである。以上は名詞だが動詞的な用法も生まれた。向こうからやって来てある場所で足を止める(いたる)の意味。これは各と同じ(各の原初的な意味が格に生き残った)。格物致知の格はこの意味である。また、向こうから来るものを押し止めてつっかかる意味。これが格闘の格(立ち向かう、打ちかかる)。また、固い芯が通るようにゆがみを正す、正しいの意味を派生する。これが厳格の格。
語のコアイメージを捉えれば、意味の展開を合理的に説明できる。