「核」

白川静『常用字解』
「形声。音符は亥。亥は獣の骨骼の形で、“かたい” という意味があり、核はその意味をも含めた字であるので、骼に近い音で用いることになった。果物の実(たね、さね)が核のもとの意味である」

[考察]
珍しく妥当な説であるが、亥に「かたい」という意味はない。イメージはある。意味とイメージは違う。意味とは言葉の意味であって、文脈における言葉の使い方である。イメージは言葉の意味にまつわって思い浮かぶ心像である。特にコアイメージは意味を限定し、意味の実現を助ける原動力になる。亥は動物の骨組みから発想され、「全体に張り渡る」「ごつごつと固い」というイメージを示すための記号である(169「劾」、174「該」を見よ)。 後者のイメージから核という語が生まれる。なお骼は核よりも新しい字で、核が骼の音を用いたということはありえない。また各はkakの音、核はɦəkの音で違う。
古代漢語では果実のさねをɦək(呉音ではギヤク、漢音ではカク)といった。この聴覚記号を表記する視覚記号として核が生まれた。核は「亥(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。亥は動物の全身の骨格を描いた形だが、骨格という実体に重点があるのではなく、その形態・形質に重点がある。骨組みは全体にぴんと張り渡った形をしている。したがって「全体に張り渡る」というイメージを表すことができる。また骨組みは内部にある固い芯でもあるから、「固い芯」「ごつごつとして固い」というイメージも表すことができる。核は後者のイメージを用いて造形された。