「較」

白川静『常用字解』
「形声。音符は交。古い字形では䡈に作り、音符は爻。較は車のもたれから前方に突出している横木で、爻がその形である。“くらべる、あきらか” という意味は、交わっている木が二つ(爻)突出していることから生まれたものであろう」

[考察]
形声の説明原理がないのが白川漢字学説の特徴である。だからすべて会意的に解釈する。爻(交わっている横木が二つ突出している)+車→車のもたれから前方に突出している横木という意味を導き、交わっている横木が二つ突出していることから、「くらべる、あきらか」の意味になったという。
車の横木から「くらべる」の意味に転じる理由の説明がぴんと来ない。説得力がなく、合理性もない。

較は最古の古典の一つである『詩経』では、体を安定させる車のてすりの意味で使われている。ではなぜこれが比較の較(くらべる)の意味に展開するのか。意味の展開はコアイメージによることが多い。語のコアイメージを捉えれば意味の展開がスムーズに理解できる。
較のコアイメージは交の部分に隠されている。交は「交差する」のイメージがある(532「交」を見よ)。較の本字は䡈(篆文の字体)であった。爻は×の符号を二つ重ねて「×形に交差する」というイメージを示す記号である。「爻または交(音・イメージ記号)+車(限定符号)」を合わせて、車の上に立つ人が体を安定させる横木、すなわち軾ショク(車の箱の全部にある横木)と交わらせて、箱の両側に取りつけた横木を暗示させる。
較のコアイメージは「×形に交わる」であるが、交差の形は⇄でも表せる。AとBを一緒に置いてA⇄Bのように互いに見るのが見比べることである。「⇄の形に交わる」というイメージから「くらべる」という意味に展開するゆえんである。