「額」

白川静『常用字解』
「形声。音符は客。もとの字は頟に作り、音符は各。説文に“頟は顙(ひたい)なり”とあり、“ひたい”をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がない。すべての漢字を会意的に説く特徴がある。本項では客・各から説明ができないので、字源を放棄した。

先秦の古典では「ひたい」のことを顔ガンといったが、後世に額が生まれた。ただし字体は頟→額と変わった。『史記』に次の用例がある。
 原文:叩頭且破額。
 訓読:頭を叩き、且(まさ)に額を破らんとす。
 翻訳:頭をたたいて額を割ろうとした。

「ひたい」は顔面のうちで比較的固い部分である。「固いものにつかえて止まる」「ごつんとして固い」というイメージを持つ各・ 客を利用して、「各または客(音・イメージ記号)+頁(限定符号)」を合わせた頟または額の図形で、「ひたい」を暗示させた(176「各」、309「客」を見よ)。