「割」

白川静『常用字解』
「形声。音符は害。害は把手のついた大きな針でㅂ(祝詞を入れる器の形)を突き刺し、その効果を失わせること、そこなうことをいう。割はさらに刀をそえてその行為を強調した字で、分断すること、分割する(分ける、わる)ことをいう」

[考察]
197「活」では、舌について、「小さな把手のついた刀でㅂ(祝詞を入れてある器)を刺し、その祈りの効果を失わせることで、刮るという意味がある」と説明している。本項の害の説明とほぼ同じ。一方は「けずる」の意味、他方は「そこなう」の意味とする。後者から「分ける、割る」の意味になったという。字形の説明にも意味の展開にも統一性・必然性が見られない。それは言葉という視点がすっぽり抜け落ちているからである。舌(カツ)と害(ガイ)は言葉が全く違うのである。字形から意味を導くのは無理がある。というよりも根本的に間違っている。
割は古典でどのように使われているか、実際の用例を見てみよう。
 原文:割鷄焉用牛刀。
 訓読:鶏を割くに焉(いずく)んぞ牛刀を用ゐんや。
 翻訳:ニワトリをさくのに牛を解体する刀は必要がない――『論語』陽貨

割は二つに切り裂くという意味で使われている。これを古典漢語ではkatといい、割という図形で表記する。割は「害(音・イメージ記号)+刀(限定符号)」と解析する。害は「切れ目を入れる」というのがコアイメージである(170「害」を見よ)。 図示すると「―↓―」の形である。中間に視点を置くと、途中で断ち切るというイメージ、両側に視点を置くと「←|→の形」、すなわち(断ち切った結果)二つに分かれるというイメージになる。これから「←|→の形に分け離す」というイメージに展開する。「―↓―の形」のイメージから割腹や割烹の割(二つに切り裂く)、「←|→」の形のイメージから分割・割譲の割(割って二つに離す、分ける)が生まれる。以上、言葉の深層構造から割の意味を分析した。