「轄」

白川静『常用字解』
「形声。音符は害。“くさび” の意味に用いる。害は車が回転するとき、そのくさびの鳴る音を写したものであろう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく、会意的に説くのが特徴である。しかし本項では害から「くさび」の意味を導くことができないので、やむなく害は擬音としている。くさびがガイのような音を出すとは思えないが。
「くさび」とは車輪が車軸から外れないようにする金具である。これを古典漢語でɦăt(呉音ではゲチ、漢音ではカツ)という。これに対する視覚記号が轄である。「くさび」の機能は車輪の脱落を防ぐことにある。ここに「遮り止める」というイメージがある。害は―|―の形に途中で断ち切るというイメージがあり、→|の形に途中で止めるというイメージにも転化する(170「害」を見よ)。だから「害(音・イメージ記号)+車(限定符号)」を合わせた轄で「くさび」を表すことができる。