「缶」
旧字体は「罐」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は雚。缶は罐の音符を省略した略字で、別に缶フの字があり、これはほとぎ(土器)の象形の字。罐ももともと土器の瓶(かめ)などをいう字であった」

[考察]
缶(フ)の説明はあるが、肝心の雚の説明がない。白川学説は形声の説明原理がないのが特徴である。だから雚からの説明ができない。
罐は古典では水を汲む道具である「つるべ」の一種の意味で使われている。この「つるべ」は桶が二つついていて、井戸の中へ上げ下げして水を汲むものである。これを表記する文字が罐である。なぜ雚が使われているのか。雚は「左右にバランスよくそろう」というイメージがある(229「勧」を見よ)。二つの桶をバランスを取りながら上げ下げする道具を表すのに相応しい。だから「雚カン(音・イメージ記号)+缶(限定符号)」を合わせた罐が考案された。

なお常用漢字の缶は、罐の左側だけを切り取った字体。本来の缶はフと読み、ほとぎ(酒や水を入れる器)の意味の別字であったが、罐と同化された。本来の缶(フ)は罐と缺(欠の旧字体)の限定符号の働きをする。