「勘」

白川静『常用字解』
「会意。勘は音符が甚の形声の字ではなく、会意の字であろうと思われる。甚には碪チン(布をのせて打つ木や石の台であるきぬた)のような字があり、力は耒の形であるから、勘はすきを研ぐという意味の字となる。その研ぎ具合を“かんがえる” ことから勘(かんが)えるの意味となる」

[考察]
白川漢字学説は言葉という視点がなく、すべて会意的に説く特徴がある。碪チン(きぬた)と勘カンは全く音が違うのに、「きぬた」から「すきを研ぐ」という意味を導く。きぬたはすきを研ぐ道具だろうか。「甚」の項では「煮炊きする鍋を上にかけている置きかまど」としており、不統一の感は否めない。形声で説明できないから会意としたのであろうが、会意でも納得できる説明になっていない。しかも研ぎ具合をかんがえるから「かんがえる」の意味へ展開させるのは、更に理解に苦しむ。また勘を会意、堪を形声とするのも不統一である。
甚は「深い」というコアイメージをもつ語で、甚は程度が深い(はなはだ)の意味で使われる(986「甚」の項で詳説する)。勘・堪などでは音・イメージ記号として「深い」というコアイメージを表す記号である。「甚(音・イメージ記号)+力(限定符号)」を合わせた勘は、力をこめて深く突き詰める様子を暗示させる図形。図形にはそれ以上の情報はないが、この意匠によって、罪や過失を突き詰めて調べることを意味する古典漢語のk'əm(呉音ではコム、漢音ではカム)を表記する。