「患」

白川静『常用字解』
「形声。音符は串カン。串は毌カンと同じく、古くは貝を連ねたて綴じた形で、貫はその下に貝を加えた形である。連ねて綴じた貝は、お互いにふれて傷みやすいものであるから、そのことを“うれえる、わずらう、おもいなやむ”ことを患という」

[考察]
串を毌と同じとするのは疑問。串は単独で存在する字で、「貫く」の意味で使われた。白川説では串を貝を連ねた形と見る。貝殻を連ねて綴じて飾り物にするのは想像できるが、生の貝を連ねて綴じる事態は想像しにくい。しかも生の貝を連ねると触れて傷みやすいから、傷むのをうれる意味になったというのは更に理解しにくい。
串は二つの枠を縦の線で貫き通すことを示す象徴的符号である。これで「貫く」というイメージを表すことができる。「串(音・イメージ記号)+心(限定符号)」を合わせた患は、心が突き通されたような心理を暗示させる。この図形的意匠によって、心配事で心が痛む(くよくよと気にかける)ことを意味する古典漢語 ɦuăn(呉音ではグヱン、漢音ではクワン)を表記する。
意味はコアイメージによって展開する。まず心理現象として、心臓が貫かれるような痛みを感じる→うれえる(心配する)の意味、次に体が痛みで突き通されるような身体現象、つまり病気にかかる(わずらう)という意味に展開する。