「棺」

白川静『常用字解』
「形声。音符は官。官は軍が行動するときに携える脤肉(𠂤の形で、祭りの肉)を駐屯地の建物の中に安置する形で、綰ワン(物をくくってたばねる。むすぶ)の意味がある。棺は死体を布で包んで納める木の箱、“ひつぎ”をいう」

[考察]
白川漢字学説には説明原理がなく、すべての漢字を会意的に説き、形から意味を引き出すのが特徴である。脤肉を駐屯地の建物の中に安置する→物をくくってたばねる→死体を布で包んで納める木の箱、と意味を導く。しかし官(脤肉を安置する)から「物をくくってたばねる」の意味に展開させるのは突飛である。官にそんな意味はない。
『論語』に次の用例がある。
 原文:鯉也死、有棺而無槨。
 訓読:鯉や死して、棺有りて槨無し。
 翻訳:鯉[孔子の息子]が死んだとき、棺はあったが槨はなかった――『論語』先進

棺は遺体を入れる木の箱(ひつぎ)の意味で、棺の外側を囲むひつぎが槨である。棺は死体をカバーするものなので、「取り囲む」というイメージがある。このイメージを表す記号が官で、「丸く取り巻く」というコアイメージがある(211「官」を見よ)。だから「官(音・イメージ記号)+木(限定符号)」を合わせた棺でもって「ひつぎ」を意味する古典漢語kuanの表記とする。官と棺は同源の語である。