「閑」

白川静『常用字解』
「会意。門と木とを組み合わせた形。門の前に木をかいており、説文に“闌(しきり)なり” として、門のしきりの意味とする。それで閑には“ふせぐ”という意味がある。間と通用して“ひま、しずか”の意味に用いる」

[考察]
『説文解字』の説を引用して、門のしきり→ふせぐの意味としている。これはほぼ正しいが、「ひま、しずか」の意味を仮借とするのは意味論的研究の不足の感がある。
『周礼』に「舎(やど)れば則ち王の閑を守る」(王が外出して宿る際には、王の駒除けを守る)という用例があり、閑は人馬の進入を遮り止める木の柵(駒除け)の意味で使われている。これを閑と表記する。「門+木」の組み合わせは舌足らずな図形であるが、何となく門に進入するのを止める木を暗示させている。重要なのは字形ではなく、語の深層構造である。ɦănという語は「遮り止める」というコアイメージがある。このイメージがあるので、閑は邪悪なものを遮って防ぐという意味を派生する。また仕事や活動を一時的に止めて生じる時間(ひま)という意味が生まれる。ここから、ひまができてゆったりと落ち着く、ひっそりと静かにしているという意味も生まれる。これらは非常に古くに生じた意味で、すでに『詩経』に「十畝の間、桑者閑閑たり」(十畝の畑の中で、桑摘み女はゆったりと)という用例がある。