「幹」

白川静『常用字解』
「形声。音符は干。正字は榦で、音符は倝。倝は飾り物のある旗竿の形で、吹き流しがつけられている。㫃は倝と同じく旗竿に吹き流しをつけた形。旗竿は旗の柱で、基本をなすものであるから、幹には“はしら、みき”の意味がある」

[考察]
倝と㫃が同じだという。こんな無駄な図形の構想があるだろうか。白川漢字学説はすべての漢字を会意的に説く方法である。AとBを合わせたCはAとBの意味をストレートに合わせたものとする。その際AとBは同列の字として扱われる。しかし形声においてはAとBは決して同等の役割ではない。Aは音・イメージ記号として言葉の深層構造に関わり、Bは言葉の意味の領域を指定する働きがある。AとBはレベルの異なった記号である。
幹は字体が榦→幹と変わってできたもの。まず榦について。「倝(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。倝は「高く上がる」というイメージを示す記号である(216「乾」を見よ)。榦は高く(まっすぐ)突っ立つ木を暗示させる。古典漢語では版築工法で両側に立てる柱や板をkanといい、榦で表記した。隠喩により高く立つ木のみきの意味に転じた。またここから物事の中心という意味が生まれ、字体を幹に変えた。
次に幹について。木を干に代えた字で、「倝(音・イメージ記号)+干(音・イメージ記号かつ限定符号)」と解析する。干は「固くて強い心棒」というイメージから「高く上がる」「中心となるもの」というイメージに展開する(204「干」を見よ)。幹という図形によって木のみきだけでなく、物事の中心となるものという意味を暗示させる。