「監」

白川静『常用字解』
「会意。臥と皿とを組み合わせた形。臥は人がうつむいて下方を見る形。皿は盤で、水を入れた水盤であろう。監は水盤に自分の姿を映している形で、水鏡をいい、“かがみ” の意味となる。水鏡に映して自らの姿を反省するので、“かんがみる”の意味にも使う。監獄・監禁の監は、檻の字形を省略した使い方である」

[考察]
白川漢字学説は言葉という視点がないから、字形から意味を導く。言葉の深層構造を探求せず、コアイメージという考え方もない。このため意味論的探求に欠陥が出てくる。監獄・監禁の監を檻の仮借とするのはその現れである。
監の使い方を古典で調べると次の用例がある。
①原文:國既卒斬 何用不監
 訓読:国既に卒(つい)に斬(た)ゆ 何を用(もつ)て監せざる
 翻訳:国はとうに駄目になったのに なぜあなたは見張らなかった――『詩経』大雅・節南山
②原文:天監在下 有命既集
 訓読:天は監(かんが)みて下に在り 命有りて既に集(な)る
 翻訳:天は下界をみそなわし 今ぞ天命は下された――『詩経』大雅・大明

①は一定の範囲を見張る意味、②は上から下を見下ろす意味で使われている。これらを意味する古典漢語がkăm(呉音ではケム、漢音ではカム)であり、これに対する視覚記号が監である。
監を分析すると「臣(目玉の形)+人+一+皿」となる。人が水を張った器の上を見下ろしている情景を設定した図形である。kămという語は水鏡(一種の姿見)を見る行為から発想されたものである。その見方は目線を上から下に向け、見る対象は一定の枠の内部である。だからkămという語は「一定の枠の中に収める」と「目線を上から下に向ける」というイメージを同時に含む。前者から①の意味が生まれ、後者から②の意味が生まれる。また前者から鑑(かがみ)という語、後者から覧(上から下を見下ろす)という語が発展する。
監視・監禁の監は一定の枠の中に入れて見張ることで、①の意味である。また枠やルールから外れないように取り締まる意味に展開する。これが監査・監督の監。監獄・収監の監は罪人を入れて見張る牢屋(これも一種の枠と言える)の意味。すべて「一定の枠の中に収める」というコアイメージからの展開である。
語のコアイメージを捉えることが意味の展開の諸相を合理的に説明できる。