「憾」

白川静『常用字解』
「形声。音符は感。感は、ㅂ(祝詞を入れる器)の上に聖器としての戉(鉞)をおいて祈りの効果を緘じこめて守り、その祈りに神が反応することをいう。その神の反応が十分でなく心残りのすることを憾といい、“うらむ” の意味となる」

[考察]
感の字源の疑問点については既に述べた(232「感」を見よ)。ここでも同じく疑問。また、なぜ「祈りに神が反応すること」から、「神の反応が十分ではなく心残りがする」という意味が出るのか、必然性がない。
憾の用例を見てみよう。
 原文:敝之而無憾。
 訓読:之を敝(やぶ)りて憾み無し。
 翻訳:これら[衣服など]を破っても後悔しない――『論語』公冶長

憾は残念に思う(後悔する)の意味で使われている。日本では「うらむ」の訓を当てるが「怨む」や「恨む」とは違う。怨恨(人に対して根をもつ)の意味ではない。
憾は感から派生した語である。感は外界から何らかの刺激を受け、そのショックで心を動かすことである(232「感」を見よ)。感動・感激の感はこれである。しかし刺激にもいろいろある。自分にとって悪い影響を与えられるものもある。自分にとってよくない心情が触発されることもある。いやなことが心を刺激して、いつまでも心に残る、この心理状態を表すのが憾である。
遺憾の憾とはいつまでもよくない心情が残ること、残念に思うことである。