「環」

白川静『常用字解』
「形声。音符は睘。睘は死者の衣裳の襟もとに死者の霊に力をそえる玉(〇)をおき、上に生命の象徴としての目をかく形で、死者が生き還ることを願う儀礼をいう。この儀礼のときに使う玉を環という」

[考察]
疑問は還でも述べた通り。 睘に「死者が生き返ることを願う儀礼」や、環に「その儀礼ときに使う玉」という意味はない。つまりそんな用例はない。具体的な文脈がない限り、意味とは言えない。形の解釈と意味が混同されている。
意味とは古典の文脈で実際に現れる意味である。言葉の意味であって字形(文字)の意味ではない。文字は言葉の表記に過ぎない。環は次の用例がある。
 原文:盧重環 其人美且鬈
 訓読:盧は環を重ね 其の人は美にして且つ鬈ケンなり
 翻訳:黒い狩り犬は首輪を連ね 主人は美しい顔と髪 ――『詩経』斉風・盧令

環は丸い輪の意味で使われているが、円形の玉が最初の意味。環は「睘(音・イメージ記号)+玉(限定符号)」と解析する。睘については241「還」でも述べた通り「丸く回る」というイメージがある。↺の形(ぐるりと丸く回る)は〇(丸く取り巻く、丸い、円形)のイメージにもなる。中空で回りを◎の形に丸く取り巻いた玉を古典漢語でɦuăn(呉音ではグヱン、漢音ではクワン)といい、環の視覚記号で表記する。