「岸」

白川静『常用字解』
「形声。音符は厈カン。干にはほとりの意味がある。厂カンは山の傾斜面の形。山が水に臨んで急斜面に傾いているあたりを岸といい、“きし” の意味となる」

[考察]
干(ほとり)+厂(山の傾斜面)→ 厈+山→山が水に臨んで急斜面に傾いているあたり、と意味を導く。字形の解剖がごたごたして分かりにくい。
字形からではなく言葉から出発すべきである。岸は次の用例がある。
 原文:淇則有岸 隰則有泮
 訓読:淇には則ち岸有り 隰(さわ)には則ち泮(つつみ)有り
 翻訳:淇の川には岸があるもの 沢には堤があるもの――『詩経』衛風・氓

岸は日本語の「きし」にほぼ当たる。川に接する所は頻(水際)であるが、水際が平地ではなく、高く切り立って崖になっている地形が岸である。これを古典漢語ではnganという。これを視覚記号化するために崖のイメージを用いた。崖はᒥの形を呈する。これを厂カンの図形で表す。また高く切り立っているので干の記号を利用する。これは「高く上がる」というイメージがある(204「干」を見よ)。かくて「厂(音・イメージ記号)+干(イメージ補助記号)+山(限定符号)」を合わせた岸が成立する。この図形によって「きし」を意味するnganを表記する。