「頑」

白川静『常用字解』
「形声。音符は元。元は人の首の部分を強調して示す字。人の首の部分は力が強く、重い頭を強く支えて曲がらないものであるから、元には強いものという意味がある。自分の考えや態度をまげないことを頑固といい、“かたくな、つよい、おろか”の意味に用いる」

[考察]
元は首で、首は力が強く、重い頭を支えるから、「強いもの」という意味があるという。古典の注釈に「元は首なり」とあるが、首は「あたま」の意味であって「くび」の意味ではない(くびは頸という)。元に「強いもの」という意味もない。したがって上の字解は完全に誤りである。

頑は古典で次のように使われている。
 原文:父頑母嚚。
 訓読:父は頑、母は嚚ギンなり。
 翻訳:[舜の]父はわからず屋、母はでしゃばり女であった――『書経』尭典

頑は愚かで物事の判断がつかない意味で使われている。この意味の語を頑と表記するが、どんな意匠の図形か。元は頭の意味である(486「元」を見よ)。頭は形態的に「丸い 」というイメージで捉えられた。頭という実体を離れて、ただ「丸い」というイメージが抽象化される。図示すると〇の形である。古典漢語の言語感覚では円形に対する観念には善悪の両面がある。欠け目のないバランスの取れた形と見る場合は良いイメージだが(例えば円満)、未分化でのっぺらぼうの形と見る場合は悪いイメージになる。知性や理解力においては分析のイメージは分・解・判など「わかる」(理解する)という語と結びつくが、分かれていないのっぺぼうは混沌、カオスのイメージで、判断できない、道理が分からない、物分かりが悪いという意味の語と結びつく。
このような言語習慣が基礎にあって、「愚かで物分かりが悪い」「道理が分からない」を意味するngănという語を「元(音・イメージ記号)+頁(限定符号)」を合わせた頑によって表記した。丸い頭というストレートな意味ではなく、カオスのようにのっぺらぼうでぼんやりした人の性格や知性を暗示させた。