「企」

白川静『常用字解』
「象形。人を横から見た形の人の下に止(足あとの形で、足の意味)をそえて、人が爪先立ちして遠くを見ている姿を示し、“つまさきだつ、のぞむ” の意味となる」

[考察]
字源説としてはほぼ妥当であるが、字形から意味を引き出すのが難点。意味は言葉にあり、古典における文脈で判断されるものである。企は次の用例がある。
 原文:企者不立。
 訓読:企する者は立たず。
 翻訳:爪先で立つ者は[不安定な姿勢なので]いつまでも立っていられない――『老子』第二十四章

企は爪先で立つ意味で使われている。これを意味する古典漢語はk'ieg(呉音・漢音はキ)である。これを表記する視覚記号を企とした。これはどんな意匠をもつか。ここから字源の話になる。企は「人(ひと)+止(foot)」を合わせて、足の指先で立つ情景を暗示させた図形である。
つま先立つという動作の意味が最初で、そこから、かかとを挙げて望み見る意味、また、先を目指して事を起こそうと計画する(くわだてる)意味に展開する。
白川説では「爪先立つ」と「望む」を区別していない。また、「人がこの(爪先立つ)姿勢をするときは、他に対して何かを企てるときであるから、企は“くわだてる”という意味になる」というが、爪先立つ姿勢と「企てる」がストレートに結びつくか疑問である。