「岐」

白川静『常用字解』
「形声。音符は支。支は木の小枝(十)を手(又)に持つ形で、すべて枝分かれしたものをいう。岐は山の岐(わか)れ路をいう字で、“わかれる、わかれみち” の意味に用いる」

[考察]
ほぼ妥当な説である。ただし「分かれ道」を山に限定する必要はない。漢字の限定符号は三つの機能がある。①カテゴリー表示(例えば鯉の魚)。②比喩的限定符号(確の石)。③図形的意匠を構想する際、具体的場面を作る働きをする場合もある。限定符号は必ずしも意味素に入らない。
支は竹の枝を示す図形で、「いつくかに枝分かれする」「(本体から)細かく分かれる」というイメージを表すことができる(680「支」見よ)。「支(音・イメージ記号)+山(限定符号)」を合わせた岐は場面を山に設定したもので、山道が本体からいくつかに分かれている状況を暗示させる。この意匠によって、枝分かれした道という名詞、また枝分かれする(いくつかに分かれる)という動詞の用法をもつ古典漢語gieg(呉音ではギ、漢音ではキ)を表記する。