「崎」

白川静『常用字解』
「形声。音符は奇。奇にかたよる、不安定なものの意味がある。崎は山道などの“けわしい” ことをいう。陸部が水中に突出し、その地形が変化の多い所を埼・碕(さき、みさき)という。崎は埼と通用して、わが国では“さき、みさき”の意味に用いる」

[考察]
形声でも会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。会意とはAの意味とBの意味を合わせたものがCの意味とするもの。だから奇を「かたよる、不安定なもの」の意味とする。意味とは言葉の意味であって、実際に文脈で使われる意味である。奇は「変わっている」「珍しい」「怪しい」の意味であって、「かたよる、不安定なもの」という意味で使われることはない。
形声の原理は言葉の深層構造に掘り下げて、コアイメージを捉える方法である。奇は「∠の形に傾く」「バランスを欠いて片寄る」というイメージを示す記号である(265「奇」、278「寄」を見よ)。イメージであって意味ではない。意味の根底にあるものがコアイメージである。したがって「奇(音・イメージ記号)+山(限定符号)」を合わせた崎は、山の道が∠形に傾いて平らでない状況を暗示させる。この意匠によって、地勢が平らでないことを意味するk'iar(呉音・漢音でキ)という語を表記する。
日本では崎に「さき」という訓を当てる。「さき」 は先(先端、突端)である。先は∠の形や∧の形である。だから「ななめに傾く」というイメージのある漢字「崎」を「さき」に当てた。