「棋」

白川静『常用字解』
「形声。音符は其。其は箕(四角形のちりとり)の形で、ほぼ四角形のものをいう。碁盤や将棋盤の形は四角であるから、碁・棋のようにいい、“ご、しょうぎ” の意味に用いる」

[考察]
ほぼ妥当な説である。ただし形から意味を引き出すのではなく、意味から形を考える発想が必要である。意味は言葉の意味であって、字形にはない。
囲碁の歴史は非常に古く、聖天子である尭の息子が不肖の子だったので、性格や品行を矯め直すために囲碁のゲームを発明したという伝説がある。周代では囲碁を奕エキといった。また、囲碁をする道具を古典漢語ではgiəg(呉音ではゴ、漢音ではキ)といい、その視覚記号を棋とした。これは木で作った四角い台であるので、「其(音・イメージ記号)+木(限定符号)」を合わせたもの。其は「四角い」「四角い台」というイメージがある(277「基」を見よ)。
のち囲碁のゲームも棋でカバーした。また特に碁石を碁で表したが、碁も囲碁のゲームの意味をカバーするようになった。棋と碁は言葉としては同じで(ともにgiəg)、表記が異なるだけである。日本では棋キと碁ゴを使い分けるが、意味に違いはない。