「欺」

白川静『常用字解』
「形声。音符は其。其は四角形の箕の形。おにやらいなどのときに蒙倛とよばれる四角の大きな仮面をつけて神などに扮し、演技をしたことから、仮面であざむき、いつわるというのがもとの意味である」

[考察]
ほぼ妥当な説であるが、なぜ「仮面であざむき偽る」の意味になるのかが分かりにくい。仮面を使わなくても「あざむく」ことはできる。仮面を持ってくる理由の説明が必要である。
其は「四角い」というイメージを示す記号である(277「基」を見よ)。其は旗にも使われている。また魌キ(四角い仮面)にも使われる。追儺で鬼を追い払うときにこの仮面を被って脅す。仮面の働きは実体を覆い隠すということである。このイメージを利用したのが欺である。「其(音・イメージ記号)+欠(限定符号)」を合わせて、仮面で実体を隠すのと同じように、実体を隠して人をだます状況を暗示させる。欠は大口を開けて行う行為に関わる限定符号。この意匠によって「だます」「あざむく」ことを意味する古典漢語のk'iəg(呉音ではコ、漢音ではキ)を表記する。