「喫」

白川静『常用字解』
「形声。音符は契。吃と同じ系統の字であるので、キツの音で読まれた。“くらう、くう、のむ” の意味に用いるが、飲みこむときの音を写した擬声語であったのであろう」

[考察]
契からの解釈ができないので擬音語とする。飲みこむときキツと鳴るだろうか。喫をキツと読むのは日本で間違えたもの(これを慣用音という)であって、古典漢語ではk'ek(呉音ではキャク、漢音ではケキ)であった。
漢代の『新書』に「山草を喫す」と用例があり、食べるという意味で使われている。食べるという行為は物を口に入れて歯で嚙み切り、咀嚼した後飲み込む。この一連の行為のうち、最初に現れる意味が「たべる」、次に「のむ」である。また、体内に取り込むということを比喩として、身に受けるという意味を派生する。これが喫緊・満喫の喫の用法である。
さてk'ekを表記する視覚記号が喫である。これは「契(音・イメージ記号)+口(限定符号)」と解析する。契は「㓞+大」、㓞は「丯+刀」に分析でき、丯という記号にコアイメージの源泉がある。これは「切れ目を入れる」というイメージである(170「害」を見よ)。契も同じコアイメージをもつ(425「契」を見よ)。したがって喫は食べ物に切れ目を入れて食べる状況を暗示させる。