「脚」

白川静『常用字解』
「形声。音符は却。却は、神判に敗れた者(大)と、神への誓いのときに用いたㅂ(祝詞を入れる器)の蓋を外したものをすて去るのを跪いている人が拝している形で、“すてる、しりぞける、しりぞく” という意味がある。それに体の部分を意味する月(肉)を偏として加えた脚は、しりぞくときの“あし”をいう」

[考察]
疑問点は308「却」と共通。もう一つ疑問を追加すると、「しりぞくときのあし」とは何のことか。
古典から脚の用例を見てみよう。
 原文:抽刀而刎其脚。
 訓読:刀を抽きて其の脚を刎(は)ぬ。
 翻訳:刀を抜いてそのあしを切り払った――『韓非子』外儲説右下

注釈に「脚は脛なり」とあるように、膝から下の部分のあしの意味である。これを古典漢語ではk'iak(呉音ではカク、漢音ではキャク)という。これに対する視覚記号は腳から脚に変わった。卻→却と平行する字体の変更である。しかし卻も却も「下方(後方)に引き下がる」というコアイメージが共通である(308「却」を見よ)。「却(音・イメージ記号)+肉(限定符号)」を合わせた脚は、跪くと膝の後ろの方へ引き下がる足の部分を暗示させる図形。この意匠によってk'iakを表記する。