「丘」

白川静『常用字解』
「象形。古い字形では、両山にはさまれた谷あいの形で、山間の凹地のところをいうようである。いま土地の小高くなったところを丘といい、“おか” の意味に用いる」

[考察]
字形に囚われて「山間のくぼ地」の意味とするが、最初の文献(『詩経』など)ですでに小高い山の意味で使われている。
清朝の言語学者は「丘は虚なり」と語源を説いている。虚は◡形に曲がる(へこむ)というイメージと「おか」という意味がある。k'iuəgという言葉は臼(◡形にへこむ)とも同源である。◡の形は視点を変えると◠の形のイメージにも転化する。◡の形にへこんだものは逆から見ると◠の形に盛り上がるイメージになる。イメージは視点や視座を変えることで変化することがある。k'iuəgという言葉は◠の形に盛り上がった地形、つまり小高い山(おか)の意味である。
この語を丘という図形で表記した。これは虛(異体字は虗)の下部にも見られるように、両側に峰のある山を描いた形である。字形にこだわると両山に挟まれた谷合い(山間のくぼ地)の意味になりかねないが、そんな意味で使われたことはない。