「吸」

白川静『常用字解』
「形声。音符は及。“すう” の意味に用いるが、吸は息をすうときの音を字にしたものであろう」

[考察]
形声の説明原理を欠くのが白川漢字学説の特徴である。だからすべて会意的に説かれる。しかし及からの説明ができないので(字源を放棄)、やむなく擬音語とした。
及は前のものに後から追いついて届くことである。図示すると|←の形である。A←Bに限りなく接近し、やがてA・Bの形につながる(315「及」を見よ)。これが「追いつく」のイメージであるが、二つだけではなくいくつかのものが次々に追いつくこともあるこれを図示するとA・B・C・D・・・のように連鎖した形になる。これは「点々と(線条的に)つながる」というイメージである。及はこのようなイメージを表す記号にもなる。
息や液体を口にすうことを古典漢語ではhiəp(呉音ではコフ、漢音ではキフ)という。これを表記するために上記のイメージをもつ及を用い、「及(音・イメージ記号)+口(限定符号)」を合わせた吸が考案された。物がずるずるとつながるような形で、口の中へ到達する状況を設定した図形になっている。