「朽」

白川静『常用字解』
「形声。音符は丂(コウ)。丂は刃が弓なりに曲がっている小刀、ナイフの形。ナイフで木を削ると、そこから木がくさりやすいので、朽は“くちる” の意味となる」

[考察]
号の項では「丂は木の枝の形」とあり、不統一。丂をナイフとするのは根拠に乏しい。「木+丂(ナイフ)」から「くちるの意味が出るというのは必然性がない。
字形から意味を求めるのは無理である。というよりも根本的に誤りである。意味は古典の文脈から知ることができる。
 原文:荼蓼朽止
 訓読:荼ト・蓼リョウは朽ちたり
 翻訳:ノゲシとタデは腐ってしまった――『詩経』周頌・良耜

朽は草木が腐る意味である。この言葉を図形化して「丂(音・イメージ記号)+木(限定符号)」を合わせた朽で表記する。丂は何かの実体を表す字ではない。漢字には象徴的符号から生まれたものもある。丂は下から伸び出ようとするものが一線でつかえて曲がる状態を暗示させる象徴的符号である。これによって「つかえて曲がる」「曲がって伸びない」などのイメージを示す記号となりうる。草木が腐るという意味の言葉を丂のイメージで表そうとするのは、腐った結果の形状に焦点を置いて造形したものである。