「泣」

白川静『常用字解』
「形声。音符は立。声を出さずにしのび泣き、涙が尽きて血が流れるほど悲痛をきわめることを、泣血という」

[考察]
形声の説明原理がなく、会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、立からの説明ができないので、字源を放棄している。
古人は「立は林なり」と語源を説いている。「▯-▯の形に並ぶ」というイメージである。立は一線(地)の上に両足を並べて立つ人の姿である。ただし図形から意味が出るのではなく、「▯-▯の形に並ぶ」というイメージを図形に表したのである。▯-▯の形が連鎖すると、このイメージは「▯・▯・▯・▯・・・の形に点々と並ぶ」というイメージに転化する。このイメージから「粒状をなす」というイメージが生まれる。また「「▯・▯・▯・▯・・・の形につながる」というイメージに転化し、その究極的には「線条をなす」というイメージに転化する。つまり点の連続が線になるのである。
古典漢語で「なみだ」、また「なく」ことをk'iəp(呉音ではコフ、漢音ではキフ)といい、これを泣と表記する。立は上記の二つのイメージがある。「立(イメージ記号)+水(限定符号)」を合わせた泣は、「粒状をなす」というイメージから、点々と粒をなすなみだ、また「線条をなす」のイメージから、なみだがずるずると線条的に流れる情景を暗示させる。