「急」
「㤂」が本字である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は及。及は人の後ろから手を伸ばして前の人を捕らえようとする形で、およぶという意味がある。追いつこうとして急ぎはやる心を急といい、“いそぐ、すみやか” の意味となる」

[考察]
図形的解釈をストレートに意味とするのが白川漢字学説の特徴である。及は前の人を捕らえようとすることなので、急は追いつこうとして急ぎはやる心の意味とする。
古典における急の使い方は次の通り。
 原文:兄弟急難
 訓読:兄弟難に急ぐ
 翻訳:兄弟は災難を救いに急ぎ駆けつける――『詩経』小雅・常棣

急は「いそぐ」の意味で使われている。「いそぐ」とは差し迫ってせかせかと物事をするということである。これを古典漢語ではkiəp(呉音ではコフ、漢音ではキフ)といい、急で表記する。これを分析すると「及(音・イメージ記号)+心(限定符号)」となる。及はA→Bの形にAがBに追いついて届くというイメージがある(315「及」を見よ)。Aは限りなくBに接近するからAとBの間隔は狭くなる。空間的イメージは時間的イメージ、さらに心理的イメージにも転用できる。時間的には差し迫った状態、心理的にはせかせかと焦る状態である。したがって急は差し迫って余裕のない気持ちを暗示させる。