「級」

白川静『常用字解』
「形声。音符は及。及には後ろから前の人におよぶ、届くという意味がある。この前後の関係を上下の関係に移していえば、階段の意味となる。級はもとは糸を織機にかけて、順序を追って布に織っていくという意味であるが、のち“しな、きざはし” の意味に用いる」

[考察]
「階段」の意味と「順序を追って布を織る」の意味がどういう関係なのかの説明がない。おそらく階段は順序をなしているものという意味であろう。しかし「糸+及(階段)」から布を織るという意味になるというのは突飛すぎる。合理性、必然性がない。
形声文字の説明原理がないのが白川漢字学説の特徴である。言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉え、語源的に意味を解釈する方法が形声の原理である。
まず古典における級の用例を見よう。言葉の意味は文脈から知ることができる。
 原文:授車以級。
 訓読:車を授くるに級を以てす。
 翻訳:車の与え方は位の順序とする――『礼記』月令

級はある基準で定められた順序や位の意味で使われている。これを古典漢語でkiəp(呉音ではコフ、漢音ではキフ)といい、級で表記する。これは「及(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。及はA→Bの形にAがBに追いついて届くというイメージがある(315「及」を見よ)。二つだけでなくA→Bの形が連鎖するとA→B→C→Dの形に次々とつながるというイメージに転化する。ここに順序のイメージが生じる。「点々と順を追ってつながる」というイメージに展開する。糸は限定符号である。限定符号は図形的意匠の場面作りという役割がある。糸の場面の一つに織物がある。染め糸を織る場合模様を出すためには順番に従って織る必要があr。このような織り方の場面を設定したのが級である。すなわち模様を織り込む糸を順序通りにつなげて織っていく情景である。これが級の図形的意匠であるが、そのような意味を表すのではない。この意匠によって、「ある基準に従って段々と順を追って設けたもの(位、クラス)」を暗示させるのである。等級・階級の級である。