「球」

白川静『常用字解』
「形声。音符は求。求は剝ぎ取った獣の皮の形で、裘(皮衣)のもとの字である。求はくるくると巻いて丸くすることができるものであるから、丸いものをいう語となり、球とは丸い“たま”をいう」

[考察]
言葉という視点がなく、言葉の深層構造を見ないのが白川漢字学説の特徴である。だから意味を表面的、皮相的に捉える。皮衣は巻いて丸くすることができるから、求は丸いものという意味があるとする。この解釈は球が丸いものだから、求にも丸いものという意味があるとしただけである。求に丸いものという意味はない。

言葉の深層構造を探るとは要するに語源を考えることである。それには語のコアイメージを捉えることが重要である。コアイメージはいわゆる「音・イメージ記号」で示される。球の場合は求にコアイメージの源泉がある。求は「中心に向けて引き締める」というコアイメージがある(詳しくは323「求」を見よ)。「求(音・イメージ記号)+玉(限定符号)」を合わせた球は、周辺から中心に向けて等距離に引き絞られて周囲が円形になった玉を暗示させる。この図形的意匠によって、丸い宝石を意味する古典漢語giog(呉音ではグ、漢音ではキウ)を表記する。
毬(まり)も同じコアイメージによって実現された語である。
球は宝石の一種だが、立体的で丸いもの(たま、ボール)の意味に転義する。