「拠」
正字(旧字体)は「據」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は豦。豦は、釣鐘の掛け金の部分を鐻というので、固くその拠りどころを確かめるの意味であるから、身の倚りかかるところを拠というのであろう」

[考察]
釣鐘の掛け金→固くそのよりどころを確かめる→身のよりかかるところという意味展開はよく分からない。『字統』では「豦はおそらく鐘鐻のように安定した台座をいうもので、その台座に依拠する意であろう」とある。釣鐘の台座→台座に依拠するの意味展開は分からないでもない。しかし拠に「台座に依拠する」という意味があるだろうか。また劇の項では「豦は虎の頭をした獣の形であるが、これは模擬的な儀礼を行うために虎の皮を身に着けて、人がその役を演じている姿」とある。解釈が不統一である。

據も劇もともに満足させる解釈はないだろうか。戦いや争いの際は力と力が激しくぶつかり合うが、それは互いに力を頼むからである。このような争い事の場面から発想されたのがkiag(據)であり、giăk(劇)である。戦闘の場面を図形に表したのが豦である。『説文解字』では「豕と虎の闘ひて解けざるなり」と字源を説明している。この意匠を作ることによって、「激しく力を出す」というイメージと、「力を頼みにする」というイメージを同時に表すことができる。かくて「豦キョ(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせた據は、力になるものを頼りにして、それに身を置く状況を暗示させる。具体的文脈では次のように使われる。
 原文:亦有兄弟 不可以據
 訓読:亦兄弟有れども 以て拠るべからず
 翻訳:また兄弟はあるけれど 頼りにならない――『詩経』邶風・柏舟
據(拠)は頼りになるものに身を置く意味で使われている。依拠や群雄割拠の拠はこの意味である。