「魚」

白川静『常用字解』
「象形。上から見た魚の形」

[考察]
甲骨文字や金文はほぼ写実的に「うお」を図形化している。だからと言って、この図形から「うお」の意味が出たのではない。形から意味を導くのが白川漢字学説の特徴であるが、魚の場合も間違いを指摘できる。
歴史的、論理的に述べると、「うお」を意味する古典漢語にngiag(呉音ではゴ、漢音ではギョ)という言葉があった。なぜngiagと名づけられたのか。これは語源の問題である。魚の形態的特徴は固い骨(芯)が筋をなして張っていることである。ここに「筋張って固い」というイメージがある。鯁(硬い魚の骨)・粳(芯の硬い米、うるち)や糠(穀物の種子の筋張った皮)とイメージが非常に近い。ngiagは「芯が通っている」「筋張っている」というイメージから名づけられた。ngiagに対する視覚記号として魚が考案された。
ここから字源の問題になる。魚は「うお」の象形文字だが、絵と違うのは、輪郭(頭と鰭と尻尾)だけではなく、胴体部分の筋張った形態まで描き込んでいることである。まるで内部を透視するかのような描き方である。これは言葉のコアにある「芯が通っている」「筋張っている」というイメージを図形化したからと考えてよい。