「漁」

白川静『常用字解』
「形声。音符は魚。古い字形には、魚に又(手の形)を加えて魚を釣る形、罔の形と又とを加えて網で捕る方法を示している字や水と二つの又を加えて水の中の魚を両手で捕ることを示す字があり、魚を釣り、網で捕り、あるいは手づかみすることを漁という」

[考察]
字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法である。さまざまの字形から「魚を釣る」「魚を網で捕る」「魚を手づかみする」という意味を導く。果たして正しいだろうか。
魚と漁は古典漢語の上古音がngiag(呉音ではゴ、漢音ではギョ)で、全く同音である。魚は「うお」の意味のほかに「うおを捕る」の意味に使われたが(英語のfishと似ている)、後に分化し、名詞には魚、動詞には「魚(音・イメージ記号)+水(限定符号)」を合わせた漁が考案された。
『易経』に「以て佃デンし、以て漁ギョす」(狩りをしたり、すなどりをしたりする)とある。漁はただ「魚を捕る」の意味であって、水、釣り、網などの意味素は含まれていない。これは字形から引き出された意味素である。