「挟」
正字(旧字体)は「挾」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は夾。夾は人が両脇に人をかかえている形で、ものを挟むという意味がある。さらに手を加えて手で抱えこむ意味を示し、“はさむ、さしはさむ、はさまる、もつ”の意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がないのが特徴である。だからすべて会意的に解釈される。夾(両脇に人を抱える)+手→手で抱え込むという意味を導く。
白川漢字学説は言葉という視座がないから形声文字を扱えない。形声の原理とは言葉の深層構造に掘り下げて、語源的に探求する方法である。
言葉の深層構造をなすものがコアイメージである。コアイメージは音・イメージ記号(いわゆる音符)で示される。挾のコアイメージは夾にその源泉がある。これはどんなイメージか。「→・←の形に真ん中のものを両側からはさむ」というイメージである(357「峡」を見よ)。このコアイメージはさまざまな分野に存在するが、手に関わる行為という事態に限定する。その限定符号が「手」である。「手の指の間に物をはさむ」という行為を表す言葉が生まれ、これを古典漢語でɦāp(呉音でゲフ、漢音でケフ)と造語され、挾と造形された。古典に次の用例がある。
 原文:既張我弓 既挾我矢
 訓読:既に我が弓を張り 既に我が矢を挟む
 翻訳:今ぞ弓をぴんと張ったよ 今ぞ矢を指に挟んだよ――『詩経』小雅・吉日

指にはさむ意味から、脇にはさむ(わきばさむ)の意味、また一般に、両側から中の物をはさむ意味に展開する。