「橋」

白川静『常用字解』
「形声。音符は喬。喬は高(ものみやぐらのある城門)の上に神を招く標木(目印の木)を立てる形。古代の橋にはその両端にこのような神聖な標木を立てたのであろう。“はし、たかはし” の意味に用いる」

[考察]
字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法であるが、喬(城門の上に神を招く標木を立てた形)から「はし」の意味は出てこない。これは白川漢字学説の不徹底を示している。本当は会意ではなく形声で説くべきであるが、白川漢字学説には形声の説明原理がない。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げて、コアイメージを捉えて、意味を解明する方法である。もっとも言葉の意味は文脈で分かることであり、意味の展開の諸相をコアイメージで解明するのである。
古典漢語では川に架け渡したはしをgiɔg(呉音ではゲウ、漢音ではケウ)という。これに対する視覚記号が橋である。分析すると「喬(音・イメージ記号)+木(限定符号)」となる。なぜ喬の記号が使われたか。一つは音の類似性(喬もgiɔgの音)。もう一つはイメージの類似性。喬について『説文解字』は「高くして曲がるなり」と解している。「高い」と「曲がる」の二つのイメージをもつ記号である。喬は「高」と「夭」を合わせた字で、夭は体を曲げ、頭をかしげる人の図形から「◠形に曲がる」というイメージが取られる。高い建築物の上端(先端)が◠形に曲がっている情景が想定され、「高い」と「曲がる」のイメージが喬という記号で表される。
なぜ「はし」をgiɔgと名づけたのかの理由はこうである。太鼓橋のような「はし」は◠の形、吊り橋は◡の形を呈する。これらは特殊な「はし」である。一般の「はし」は川の水の上に架け渡すもので、水から高く上がっていなければならない。だから「高い」のイメージをもつ喬によって名づけられた。