「響」
正字(旧字体)は「響」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は郷。郷は皀(𣪘で、食物を盛る器)をはさんで二人が座り、嚮い合い、饗宴をする形で、“むかう”という意味がある。相むかって共鳴する音を響といい、“ひびく、ひびき、おと”の意味となる」

[考察]
「相むかって共鳴する音」とは何のことだろうか。「ひびき」なのか「こだま」なのかはっきりしない。
響は古典で次の用例がある。
 原文:若影之象形、響之應聲也。
 訓読:影の形に象(に)、響の声に応ずるが若(ごと)きなり。
 翻訳:影と形が似ており、こだまが声に応じるようなものだ――『管子』心術

響は「こだま」の意味である。影響とは影と形、響と声が互いに応じ合う関係があるように一方から他方に関係を及ぼすということである。響は「こだま」だからこそ声と応じ合うのである。
響は郷のイメージから派生する語である。郷は「→←の形に向かい合う」というイメージがあり、これは「⇄の形に通い合う」というイメージにも転化する(366「郷」を見よ)。←の方向に声を発すると→の方向に跳ね返ってくるもの、これを古典漢語では郷と同じ音でhiang(呉音ではカウ、漢音ではキヤウ)という。日本語の「こだま」に当たる。視覚記号として「鄕(音・イメージ記号)+音(限定符号)」を合わせた響が作られた。
「こだま」は⇄(双方向)のイメージであるが、「→」または「←」(一方向)のイメージも郷で表すことができる。音が振動してある方向に伝わる現象、これもhiangという。これは「ひびき」である。