「金」

白川静『常用字解』
「象形。鋳込んだ金属の形。金は銅などを一定の型に鋳込んだ塊の形。その形はレールを切断した断面の形である。それに鋳込んだ銅の小さな塊である=を加えて、鋳込んだ金属の塊であることを示した。金は金属のことをいったが、古くは銅のことであり、のち金は黄金・金銀の金の意味に使われた」

[考察]
金の字形から銅の意味を導いた。383「均」の項では勻の「=」が銅の塊の形としているが、これが「金」にも含まれると見たようである。しかし「=」が銅の塊とはあまりに突飛すぎる。『説文解字』が「左右の注(点)は金の土中に在るに象る。今の声」と分析するのが信用できる。金と今は全く同音(kiəm)で、同源の語である。
金は古典では次のように使われている。
 原文:有匪君子 如金如錫
 訓読:匪ヒなる君子有り 金の如く錫の如し
 翻訳:あやなす君子の姿は 金のように錫のように――『詩経』衛風・淇奥

金はこがね(gold)の意味で使われている。金属類を表す言葉は銀・銅・鉄・鉛・錫など漢字一字(一音節)の名称になっている。goldも一音節語であったと考えても不思議ではない。これは今との同源意識からkiəmと名づけられ、これの図形化として「金」が考案された。銀・銅などの限定符号ともなっているから、金が最初に発生し、金属の代表とされて、他の金属を表示する図形に利用されたわけである。以上が金の意味展開である(白川説では銅→金属→こがねとしている)。
次になぜ金が考案されたのか。どのような意匠があるのか。ここから字源の話になる。「今(音・イメージ記号)+ハ(小さな二つの点を示すイメージ補助記号)+土(限定符号)」と解析する。「土」は土と関係があることを示す、あるいは、土に関わる状況を設定するための限定符号と見る。今はどんなイメージをもつ記号か。後に詳しく述べるが(「今」を見よ)、今は「中にふさぐ」というイメージがある(取りあえず42「陰」を見よ)。かくて金は地中に点々と閉じ込められた砂金を暗示させる。
『釈名』では「金は禁なり」と語源を説いている。禁も「閉じ込める」「中に入れてふさぐ」というイメージがある。金は物質の存在形態の特徴(土中の砂金)、あるいは採取される場所(砂金を含む土)から発想された言葉である。ほかの金属では銀が用途から、鉄・銅・鉛が性質から命名された。