「襟」

白川静『常用字解』
「形声。音符は禁。禁にはとどめる、とじこめるという意味がある。衣服の“えり”をいう。襟もとは人の魂が出入りするところであった。死者の襟もとは魂が体外に出るのを防ぐために閉じるので、襟には閉じる、閉じる所の意味があるのかもしれない」

[考察]
字形から意味を読み取るのが白川漢字学説の特徴である。衣+禁(とじこめる)→死者の魂が体外に出るのを防ぐために閉じる所(衣のえりもと)という解釈である。
人が死んだら魂がえりもとから出ていくとは信じられない話である。魂が出ていかないように閉じるから襟だという。生きている人の場合はどうなのか。襟を開けてはいけないということか。魂が抜け出ないように閉じ合わせるのが襟だとは理解するのが難しい。
古人は「襟は禁なり。前に交はりて、風寒を禁禦する(ふさぐ)所以なり」(『釈名』)と語源を説いている。風や寒さを防ぐために衣の前を閉じ合わせる所が襟という解釈。この方がよほど分かりやすい。
禁は「中をふさぐ」「中に入れてふさぐ」というイメージがある(390「禁」を見よ)。「禁(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」を合わせて、衣の前(喉元または胸元)をふさぐ部分を暗示させる。何のためにふさぐかは図形には反映されていない。常識的に考えれば肌を見せないようにするためであろう。