「銀」

白川静『常用字解』
「形声。音符は艮。説文に“白金なり” とあるが、白い色の金という意味ではなく、銀のことであり、白は銀の色をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説く特徴がある。しかし本項では艮からの説明もできないため、字源を放棄した。
形声の説明原理とは言葉の深層構造を掘り下げ、語源的に探求する方法である。銀・眼・恨・根・限・痕などのグループは艮という共通の記号をもつ。艮がコアイメージを提供する基幹記号である。艮はどんなイメージを表す記号か。「いつまでも消えない痕を残す」というイメージである(252「眼」を見よ)。シルバーという金属は『書経』や『管子』など古い文献に登場し、早くから知られ、装飾品の原料とされた。その金属に対する命名の動機は用途に基づくものと推測される。シルバーは象嵌細工に使われた。だから「痕跡を残す」「じっと止める」というイメージをもつ艮の仲間の語として造語され、ngiən(呉音ではゴン、漢音ではギン)と名づけられ、「艮(音・イメージ記号)+金(限定符号)」を合わせた銀が造形された。この図形の意匠は「細工物にはめ込んで印や模様を残す金属」ということである。
金属によって命名の動機が違う。金・銀は用途から、鉄・鉛・銅は性質から命名された。