「掘」

白川静『常用字解』
「形声。音符は屈。尾を捲いてうずくまる獣の形。土を掘り崩して住む堀(あな)を掘ることを掘という。それで掘は“ほる、うがつ”の意味となる」

[考察]
堀(あな)を掘ることが掘だという説明。なぜ屈(うずくまる獣)から掘るの意味が出るのか。白川によれば
 屈(尾を捲いてうずくまる獣)→窟(尾を捲いた獣の住む所)→堀(土を掘り崩して作った住む穴)→掘(土を掘り崩して住む穴を掘る)
と展開するらしい。これらの漢字に括弧内の意味があったとはとうてい思えない。図形的解釈と意味を混同するのが白川漢字学説の特徴である。
掘は古典で次の用例がある。
 原文:掘地爲臼。
 訓読:地を掘りて臼を為(つく)る。
 翻訳:土を掘って臼を作った――『易経』繫辞伝下

掘はただ「ほる」という意味である。屈にコアイメージの源泉がある。屈は「下方にへこむ」というイメージがある(407「屈」を見よ)。「屈(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせた掘は、土をうがって下方にへこませる情景を暗示させる。この図形的意匠によって「ほる」の意味をもつ古典漢語giuət(呉音ではゴチ、漢音ではクツ)を表記する。