「型」

白川静『常用字解』
「形声。音符は刑。刑のもとの字は㓝で、井ケイは鋳型の外枠。その外枠に土を塗り固めて作った鋳型が型で、刂(刀)は鋳型を整形するための刃物であろう。型は“いがた” の意味から、すべての“かた”の意味に使う」

[考察]
「刑」の項では刑を「首や手に井(かせ)をはめる」と解釈している。本項の記述と矛盾する。だから型を「刑+土」と見るのではなく、「井+刀+土」と見るのであろう。その結果、井(鋳型の外枠)+刀(鋳型を整形する刃物)+土→鋳型の外枠に土を塗り固めて作った鋳型という意味を導いている。
意味を予想して井を鋳型とするのが変である。だから刑では井を枷、形では木の枠とする矛盾が起こる。
三つを概括するものがないだろうか。白川学説は言葉という発想がなく、コアイメージの概念もないから、三つを概括するものに思いも及ばない。「枠」というイメージで概括すれば鋳型も枷も木の枠も概括できるのである。「枠」あるいは「枠をはめる」が井のコアイメージであり、刑・形・型を貫く共通のイメージである。
言葉の深層構造を掘り下げ、語源的にコアイメージを捉える方法が形声の原理である。白川漢字学説は言葉の視座がなく、字形から意味を導くのが特徴である。その結果起こることは、図形的解釈と意味の混同である。
意味は言葉の意味であって字形にあるのではない。言葉の意味はどうして知ることができるのか。言葉が使用される文脈から知ることができる。文脈がなければ知りようがない。文脈がない言葉(つまり用例がない言葉)の意味は想像でしかない。字形から割り出した意味も同じである。 
型は次の用例がある。
 原文:劍之始下型、擊則不能斷。
 訓読:剣の始めて型に下すや、撃てば則ち断つ能はず。
 翻訳:剣が最初に鋳型に入れられる時は、撃っても物を断ち切ることはできない――『淮南子』修務訓

型は同じ形を作り出す外枠、つまり「かた」の意味である。これを古典漢語ではɦeng(呉音ではギヤウ、漢音ではケイ)という。これを代替する視覚記号が型である。刑は「枠にはめる」というイメージがあり、刑・形・型は全く同音であり、共通のコアイメージをもつ(418「刑」、419「形」を見よ)。だから三語は同源である。型は「刑(音・イメージ記号)+土(限定符号)」を合わせて、原料を入れて器物を複製する粘土の枠を暗示させる。この図形的意匠によって、「かた」「鋳型」の意味をもつɦengを表記する。
ちなみに「かた」を意味する言葉は材料や用途によって異なる。木製なら模、竹製なら笵(=範)、金属製なら鎔、粘土製なら型という。