「計」

白川静『常用字解』
「会意。説文の字形によると、言と十とを組み合わせた形の字であるが、古い資料がなくてもとの字形を決めることができない。ケイという音からいえば、卟ケイ(うらなう)の字との関係が考えられる。卟は占いの記録によって、占いのあたりはずれの数を調べることであり、稽(かんがえる、くらべる)とも関係のある字であろう」 

[考察]
字源の体をなしていない。『字統』では「もと占卜の記録を稽(かんが)える意」で、「言+卜」に従う字が訃報の訃を避けて計になったものだろうと推測している。
これでは字源も意味も分からない。「占卜の記録をかんがえる」という意味は計にない。
計はどんな文脈で使われているかを見てみよう。
①原文:歳終則會計其政。
 訓読:歳終はれば則ち其の政を会計す。
 翻訳:年末に行政[の治績]を総計する――『周礼』地官・舎人
②原文:校之以計。
 訓読:之を校するに計を以てす。
 翻訳:数の計算で[敵の軍事力を]比較する――『孫子』計

①は数を集めて合わせる(いくつかの数をまとめる)の意味、②は数を勘定する意味で使われている。この意味の古典漢語をker(呉音ではケ、漢音ではケイ)という。これを表記する視覚記号が計である。十は十進法で基数の後に来る新しい単位を表す漢数字である。一から九までを一まとめにする単位である。したがって十は「まとめて締めくくる」「いくつかのものを集めて一本化する」というイメージを示す記号になる。かくて「十(イメージ記号)+言(限定符号)」を合わせた計は、数を読みながら、全部を集めて一つにまとめる状況を暗示させる。この図形的意匠によって①の意味をもつkerを表記する。会計・総計・合計の計が最初の意味である。計算・計測の計(②の意味)はそれから転じたものである。