「渓」
正字(旧字体)は「溪」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は奚。山間の谷の流れ、“たに” をいう」

[考察]
形声の説明原理がなく、すべて会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。本項では会意的にも説けないので、字源を放棄している。
言葉→字形の方向に渓を解釈すると次の通り。
谷川・谷間を意味する古典漢語をk'er(呉音ではケ、漢音ではケイ)という。これを代替する視覚記号が溪である。溪は「奚ケイ(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。奚は「紐でずるずるとつなぐ」というイメージがある(これについては442「鶏」を見よ)。このイメージは「一筋に連なる」というイメージにも展開する。したがって溪は谷から川に筋をなして流れる水を暗示させる。この図形的意匠によって「谷川・谷間」の意味のk'erを表記する。