「込」

白川静『常用字解』
「国字。“こむ” とよみ、一定の場所につめこんで、いっぱいになることをいい、通路に人が満ちて、自由に通れないことをもいう」

[考察]
国字は和製漢字、擬似漢字である。日本語を表記するために、漢字の造形法に基づいて漢字らしい図形に仕立てたものである。「擬似」 というのは漢字のようで漢字でないということである。漢字とは漢語を表記する記号で、形・音・義が備わっていることが条件であるが、和製漢字には音がないから漢字ではあり得ない。音とは古典漢語の音声部分で、取りも直さず聴覚記号そのものである。日本語とは違う。働や腺のドウ、センは音のように見えるが音ではなく、音を借りた「読み方」であるに過ぎない。
擬似漢字は漢字ではないが、漢字の造形法に従うものが多いので、一応なぜこんな字形ができたかの説明(字源)は必要であろう。「込」では字形の説明がなく、意味の説明がある。
「こむ」という日本語は「おもてに表さないように、深く納め入れる意」が基本で、「物を深く入れる」「人や動物をある場所にとじこめる」などの意味がある(『古典基礎語辞典』)。「深く入れる」というイメージを図形に表すため、「入(入れる)+辵(=辶。限定符号)」を合わせて込が創作された。