「八」

白川静『常用字解』
「指事。左右にものが分かれる形。もと算木で数を示す方法であり、数の“やっつ” を示す」

[考察]
「左右に分かれる形」と「算木で数を示す方法」と「数のやっつ」がどんな関係なのかよく分からない。
算木で数を示す場合、一つの横棒の下(または上)に縦棒を三つ置くのが数の八である。この算木の示し方は「左右に分かれる形」とは何の関係もないだろう。
八は甲骨文字にあるが、殷代で算木を用いて数えたという証拠はない。 
漢語における数詞の命名は数の性質によるか、数の数え方の特徴によるかに由来する。八は数の性質に着目してpuăt(呉音ではハチ、漢音ではハツ)と呼び、八という視覚記号で表記された。
数の8の性質は偶数であることである。2と4と6も偶数である。2は「並ぶ」というメージで名づけられて「二」と表記され、4は「分散する」というイメージで名づけられ「四」と表記され、6は数え方の特徴から名づけられ「六」と表記された( 1434「二」、686「四」を見よ)。では8はどんなイメージか。8は4と4に二分でき、4は2と2に二分できる。次々に両分されるという特徴が大きい。この性質は「(二つに)分かれる」というイメージとして把握される。このイメージを表す図形として「八」が考案された。これは↲↳の形に左右に分けることを示す図形である。
八が成立すると、分・半など「二つに分ける」というイメージをもつ語が生まれる。分は「八(音・イメージ記号)+刀(限定符号)」、半は「八(音・イメージ記号)+牛(イメージ補助記号\限定符号)」である。分・半は八(puăt)と音が近い。肺の右側、敝の左側にも八が含まれる。八が含まれなくても、発・伐・抜・別・拝・貝・敗・片・弁など「二つに分かれる」というコアイメージをもつ言葉がどんどん生み出される。これらは八を中心とした大きな単語家族を構成している。
漢字は形の解釈で終わるものではない。音(語源)から見ると漢字の本当の姿が見えてくる。