「翻」
白川静『常用字解』
「形声。音符は番。番は獣の足うらの形で、ひらひらするものの意味がある。翻意・翻身のように、“ひるがえる、ひるがえす”の意味に用いる」
[考察]
「獣の足うらの形」から「ひらひらするものの意味」になるというのは理解に苦しむ。ひらひらする→ひるがえるという意味展開は分かる。しかしなぜ翻訳という使い方があるのか、これでは分からない。番の解釈の疑問については1526「番」で述べた。
翻は「番(音・イメージ記号)+羽(限定符号)」と解析する。番に含まれる釆ハンの字源について、高田忠周、加藤常賢、藤堂明保らが、種を播く形で、播ハの原字と見たのが正しい。釆は拳・巻などの上部にも含まれ、種を握った拳を開いて種を播く直前の手のひらを描いている。 手のひらを開いて種を播く行為から、「円形を描くように四方に平らに広がる」「周囲を丸く取り巻く」「四方に発散する」「平面がひらひらする」というイメージを表す記号となる。番もこのイメージを表す記号である。種を播く動作は手のひらを開いたり、裏返しにしたりするから、「平面がひらひらする」というイメージがあり、表になったり裏になったりして、同じような事態がA→B→A→Bの形に繰り返される。
番は「平面がひらひらする」というイメージ。羽は鳥の羽と関係があることを示す限定符号。したがって翻は鳥が翼をひらひらさせて飛ぶ情景を暗示させる図形である。この意匠によって「平らなものがひらひらする」という意味をもつ古典漢語ではp'iuăn(呉音でホン、漢音でハン)を表記した。翩翻という使い方が最初である。
上で述べたように「平面がひらひらする」というイメージは「表になったり裏になったりする」というイメージと連合する。これから「裏返る、くつがえる」の意味を派生する。これが翻意などの翻である。また、A(表)→B(裏)に変わることから、Aという言語をBという別の言語に切り換えるという意味が生まれる。これが翻訳の翻である。白川は「また、原稿を版木に写しかえて出版することを翻刻、ある国語を他国語に写しかえることを翻訳という」と述べているが、なぜ「ひるがえる、ひるがえす」からこんな意味になるのか、理由が分からない。
意味の展開はコアイメージによって起こる。言葉の深層構造であるコアイメージを捉えないと転義現象を合理的に説明できない。
白川静『常用字解』
「形声。音符は番。番は獣の足うらの形で、ひらひらするものの意味がある。翻意・翻身のように、“ひるがえる、ひるがえす”の意味に用いる」
[考察]
「獣の足うらの形」から「ひらひらするものの意味」になるというのは理解に苦しむ。ひらひらする→ひるがえるという意味展開は分かる。しかしなぜ翻訳という使い方があるのか、これでは分からない。番の解釈の疑問については1526「番」で述べた。
翻は「番(音・イメージ記号)+羽(限定符号)」と解析する。番に含まれる釆ハンの字源について、高田忠周、加藤常賢、藤堂明保らが、種を播く形で、播ハの原字と見たのが正しい。釆は拳・巻などの上部にも含まれ、種を握った拳を開いて種を播く直前の手のひらを描いている。 手のひらを開いて種を播く行為から、「円形を描くように四方に平らに広がる」「周囲を丸く取り巻く」「四方に発散する」「平面がひらひらする」というイメージを表す記号となる。番もこのイメージを表す記号である。種を播く動作は手のひらを開いたり、裏返しにしたりするから、「平面がひらひらする」というイメージがあり、表になったり裏になったりして、同じような事態がA→B→A→Bの形に繰り返される。
番は「平面がひらひらする」というイメージ。羽は鳥の羽と関係があることを示す限定符号。したがって翻は鳥が翼をひらひらさせて飛ぶ情景を暗示させる図形である。この意匠によって「平らなものがひらひらする」という意味をもつ古典漢語ではp'iuăn(呉音でホン、漢音でハン)を表記した。翩翻という使い方が最初である。
上で述べたように「平面がひらひらする」というイメージは「表になったり裏になったりする」というイメージと連合する。これから「裏返る、くつがえる」の意味を派生する。これが翻意などの翻である。また、A(表)→B(裏)に変わることから、Aという言語をBという別の言語に切り換えるという意味が生まれる。これが翻訳の翻である。白川は「また、原稿を版木に写しかえて出版することを翻刻、ある国語を他国語に写しかえることを翻訳という」と述べているが、なぜ「ひるがえる、ひるがえす」からこんな意味になるのか、理由が分からない。
意味の展開はコアイメージによって起こる。言葉の深層構造であるコアイメージを捉えないと転義現象を合理的に説明できない。
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